在職中に投資の練習をしておくべきだった

 定年一年前の令和元年に下の息子が大学を卒業し、僕の3人の子供たちはみな自立した。やっと子育ての経済負担から解放された。

 僕は三十数年前に給料は高くも安くもないが安定してもらえるような仕事に就職し、その年すぐに結婚し、翌年の夏には長男が生まれた。二年後に長女が、その五年後には次男が生まれ三人の子供たちと充実した幸せな家庭生活を送ることができた。しかし子育てにはお金がかかる。妻が専業主婦だったこともあって経済的には綱渡りの連続だった。

 だから子どもにかかる負担がなくなった、定年までの最後の1年間は人生で初めて経済的にゆとりある貴重な期間だった。夏のボーナスは言わば初めてもらったボーナスのようなもので、すごくワクワクした。あまりの嬉しさにちょっとだけ株を買ってみたりした(そして火傷した)。投資の勉強を遅ればせながら始めた。

 世間では中高年の貯蓄の少なさが話題になっているが、僅かでも貯蓄がある人は信じられないくらいすごいと思う。子供を育てていると貯蓄なんかできるわけがない。ローン漬けだ。

 長男が大学に行く時点でほとんどの保険や財形貯蓄を解約し、2人目3人目は会社の共済や銀行の教育ローンを借りた。

 退職時のローン残債は自宅のローンが少しだけ残っていたこともあって1000万円を超えていた(退職金で返済した)。

そんな状況だったから子育て中は投資をしようなんて気持ちも余裕も1ミリもなかった。

 しかしである。

 今思えばそのような状況下でも投資の勉強をするべきだったと後悔している。ほんの僅かでも株などに投資し損を出しても相場の感覚を身につける練習をしておけばよかった。

 1株から買える証券会社もあるしアメリカの株は1株から普通に買えるから、月に5千円くらいの予算で経験を積んでおくべきだった。

 投資の技術を身につけるには時間がかかる。利益を出すには助走(勉強)期間が必要だ。ゼロから始めるのに60歳からではちと遅い。悔やまれる。